SNS上でのブランドに対する“熱量”を測ることへのトライアル
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SNS上でのブランドに対する“熱量”を測ることへのトライアル

電通マクロミルインサイト公式

こんにちは。電通マクロミルインサイトの武田互生です。

私たちのブログでは、これまで「“データ(行動履歴)”も大切だが、生活者の”行動理由”を追求することこそが大切」 という考え方のもと、行動データ×アスキング による調査のメリット、定性×定量手法を掛け合わせたアプロ―チ などをご紹介してきました。

今回は、生活者の「行動」ではあるが、「生声」でもあるSNS上の発言から、商品ブランドに対する“想いの量”、“ブランドに対する熱量”を測り、マーケティング活動に活かせないか、という試みをご紹介します。
まだデータ量や分析精度ともに、自主研究的な域を出ないところはありますが、興味のある方はご一読いただけると幸いです。

■熱量を感じるTwitterのつぶやきとは?

以下は、同じチョコ菓子のブランドに対するTwitter上のツイートです。
その人にとって、そのブランドに対する“熱量”が多いと感じるのはAとBのどちらでしょうか。

A:
「最近▲▲▲食べれていないので食べたいところ」
「▲▲▲、新作のナッツも美味しい︎」
「▲▲▲のアイス美味しい🤤」
B:
「チョコ菓子最強は▲▲▲なんよな」
「▲▲▲、おいしくて幸せ♡」
「▲▲▲のアイス天才すぎる」

AもBも、自発的にブランドをツイートしている時点でブランドに対する好意を感じます。
Aは「美味しい、食べたい」など個人の感想をツイートしています。
Bも、そのブランドに対して「最強」「幸せ」「天才」という表現を使って感想をツイートしています。

ただBのツイートの方が、その人が心を動かされているような “熱量”を感じるのは私だけでしょうか。

■ブランドへの熱量は、「人のように扱われる」表現に現れる?

“熱量”という表現ではないですが、人々がブランドに対して持つ「愛着」に着目をした研究として、「ブランド・リレーションシップ」という概念があります。
「ブランド・リレーションシップ」の定義や構成する要素にもいくつかの定義・研究があります※1 が、共通しているのは「消費者がブランドの使用経験を通じて醸成していく、喜びや驚きを超えた、信頼感や親しみ、愛情、愛着といった高次元の感情の融合体」という述べられています。(2011、菅野)

ブランドに対する「愛着」を持つと、継続的な購買行動やクチコミを促すといった面だけでなく、ブランドの失敗や悪評に直面したときに、「誰かが悪口をいったら、そのブランドを守る」といった対抗的な行動をとりやすいことも指摘されています。
(田中・久保田「ブランド戦略全書」2014 P53~57など参照)

ブランドとしての新たなメッセージ発信や試みが、何かと“炎上”を生んでしまいがちな昨今において「ブランド・リレーションシップ」は非常に重要な概念と言えると思います。

こうした概念も参考にすると、先ほどTwitterのツイートのAとBを比べてみると、Aは、あくまで「チョコ菓子」としてのプロダクトの評価を表現されているのと比較し、Bはあたかも、ブランドを「人」のように扱い、信頼感や愛情、愛着を持った表現をしているようにみえます。

こうしたツイートの量をブランドへの愛着を含んだ“熱量”としてブランドを測ってみると、何が見えてくるのではないでしょうか。

■アナログ+AIで熱量の指標化を試みる

こうしたツイートの中に垣間見えるブランドに対する愛着を“熱量”として捉え、指標化できないかと考え、飲料、食品のロングセラーブランドを中心にトライをし始めています。その一部をご紹介します。

●「熱量」のある発話を分類

まず、自分の目でTwitterの「熱量」のあるツイートを探りました。今回、分析対象としたものは、ロングセラーブランドである食品/飲料周りの「6ブランド」名を含むツイート8000件でトライしました。

上記のブランドに関するツイートを、先ほど述べた「ブランド・リレーションシップ」の概念も参照し、「人に対して愛着を持って発言するように、ブランドを人との対話のように想いを語っているもの」を分類しました。

具体的には、単語の有無ではなく、発話の中の文意も捉えつつ、
下記(表1)のような動詞や形容詞を含んだツイートを“熱量のあるツイート”として抽出。
ここでは、人間との対話として使う表現の中に、「神、最強、胸熱、結婚する、エモい、有能、優勝する」といったネット用語的に賛辞等に使われる表現を含めました。

こうした言葉は、新しく生まれ、消えていくものも多いですが、自分たちの用語の中で語る=自分たちの仲間に近いものとして発話者は捉えているのではないか、考えているからです。

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スライド2【互生さん修正指示】

●自然言語処理(BERT)による分類システム(分類器)を作成し、“熱量スコア”を算出

他のブランド・カテゴリーに展開する際は、大量のツイートを処理しなければならず、アナログな方法による分類では限界があります。
また、分類者によって解釈のブレなども生じやすいため、
自然言語処理(BERT)※2 による分類システム(分類器)を作成しました。
人による分類との適合性や、ビールなど他の飲料の分類への汎用性もある程度確保されました。

Twitterには、企業からのキャンペーンのツイートや、他者のツイートの単純なリツイートも多いため、純粋な「発話」では“自発的なツイートの量”を分母とし、その中で“熱量のあるツイートの量”を分子とする“熱量スコア”を算出しました。

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●食品・飲料で25年以上のロングセラー12ブランドを比較

上記の分析を、以下のような食品・飲料のロングセラーブランドの1年間のツイートの中から2万件抽出し実施しました。1年間の総ツイート数はブランドによって大きく異なりますが、“熱量スコア”には6~10%の間のスコアでカテゴリーを跨いでも比較可能な範囲になっています。

その中で3~4%の違いではありますが“熱量スコア”の高いブランド(表2:ブランド、b、c、h、l)が見られました。スコアの差は小さいですが、分析対象の件数は多いので差があるといってよいスコアです。

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■熱量が高いと、売上も伸びる?

この“熱量スコア”は何を意味するのか...。
また、どのようにマーケティング施策に生かすのか...。

これは今後の課題ですが、同ツイートを既存のテキストマイニングツール の「ポジネガ」判定の%と傾向は一致していません。
また、同ブランドのWEBモニターに対する3,000ssの意識データとも比較しましたが、単純な「好意」や「購入意向」や「ロイヤリティ」とも傾向は異なっています。

ただ、“熱量スコア”の高いブランドは、40代以上と比べて15~39才で好意度が高い傾向があり、さらにマクロミルの購買データ(MHS)を見たところ、前年比の購入率や購入金額と、相関関係が見られました。(図1)

(図1)“熱量スコア”と100人あたりの購入金額の前年比

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“熱量スコア”の高いブランドbやブランドhは、ロングセラーブランドではあるものの、直近ではテレビCMなどでの大規模なコミュニケーションを実施していないブランドです。

その中でも若年層(15-39才)に好意の高いブランドであったり、購入金額を上昇させているのには、こうしたTwitterの何気ないツイートに垣間みられる “ブランドへの熱量”を維持、獲得している比率が高いことと関係がある可能性はありえると思います。

■最後に

今回は、生活者の「生声」でもあるTwitterのツイートから、商品ブランドに対する“想いの量”、“ブランドに対する熱量”を測り、マーケティング活動に活かせないか、という試みをご紹介しました。
まだ課題として、
  -対象ブランド数、カテゴリー、期間などが限られている
  -Twitterのネット用語などは適宜、更新する必要があり定義のブレは生じやすい
  -“熱量スコア”は、自発的なツイートを分母とする各ブランドの質的なスコアのため、総ツイート数や自発的な発言数など“絶対“量を加味していない

など、分析の頑健性等は多々あります。ただ、“ブランドの熱量”を捉え、長く愛させるブランドを保つための参考になるような生活者の足跡をさらに模索するヒントにはなるのではないかと考え、今回のツイートの分析もPOC的に進化・深化もしていきたいと思います。

今回のブランド・リレーションシップに関連したソリューションとして顧客ロイヤルティ分析がございます。ご興味ある方は以下のリンクからご確認くだいさい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。読んでいただいた方に、少しでも“熱”が感じられるようなものになっていれば嬉しく思います。ご興味を持たれた方はぜひこちらよりお問い合わせいただければ幸いです。

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注)
1.ブランド・リレーションシップの代表的な研究者であるFournierは、6つの要素(相互依存、愛・コミットメント・パートナーの質、自己との結びつき、消費者からブランドに対する親密性、 ブランドから消費者に対する親密性)が挙げられています。

2. 単語が出現するかのルールベースによる判定よりも文単位で予測可能なBERTの方が適合度は高いため、BERTを採用しています。(※適合率:予測した分類が、教師データと合致している比率)

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参考文献)
・菅野佐織 2011、駒大経営研究第42巻第3・4号
・田中洋・久保田進彦 2014、ブランド戦略全書 第3章「ブランド・リレーションシップの戦略」


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